メディアに心を蝕まれる子どもたち

2008年03月26日投稿 文:may

社会の問題に目を向けるきっかけを与えてくれた本

メディアに心を蝕まれる子どもたち メディアに心を蝕まれる子どもたち

ジャーナリストの有田芳生さんの本。
そう、あのオウム真理教の解説をされていた方です。

この本を手に取ったきっかけは
幼稚園のベテラン園長先生がじっくり真剣に語っていた
テレビが子どもたちに与える影響について聞いていたからです。

有田さんは、ザ・ワイドに10年以上コメンテーターとして
参加されてきました。
そんな彼がテレビでは言えなかった事件の裏側を語っているのが
この本となります。
彼がテレビの有害性を語ることは、
ある程度勇気のいることだったのではないかと察します。

今月(08年3月)に発売されたばかりの本です。

以下、特に印象に残ったところだけをまとめます。

○彼がこの本を書く背景

1995年に起きたオウム事件の影響を受けた神戸の少年が
2年後に猟奇的事件を起こした。

そして愛知県豊川市での「ひとを殺す経験がしたかった」と
見知らぬ主婦を殺害した少年。

バスジャックをして乗客だった女性を殺害した少年もいた。

逮捕された彼らの年齢が同じだったこと以上に、
神戸の少年と同年齢または同世代だったことが筆者には印象深かった。

また彼らの行動や発言から、彼らは「ひとりオウム」を演じていたり、
神戸の少年やその事件を意識してことがわかった。

情報の伝達とは、実は人間の行動を左右する認識の連鎖でもある。

○興味深いアンケート

強盗、恐喝、ひったくりで検挙された少年684人からアンケートをとった。
371人が回答した。
犯行に影響を与えた環境について聞くと、
暴走族や不良グループとしたのが150人。
ついで多かったのがメディアの影響(40人)、
そのうちもっとも多かったのがテレビ(31人)。

○米国での軍事訓練「人が死ぬ」「人を殺す」ことに慣れる心理操作

第二次世界大戦時の発砲率は10~15%。
当初、動かない標的を使っていた銃の訓練を
動く人形が出てきて、しかも頭部のキャベツの中にケチャップを入れて
命中すると血が吹き出すように細工した。
兵士は20代前後。
さらに、遺体の映像を何度も見せつける。
そして、相手=敵は自分たちとは同じ人間ではないという教えを
徹底させた。

この訓練方法は日本のカルト教団でも行われる。
日本では新興宗教に対する教育もなく
カルトの巣となっている。

○メディアの環境が及ぼす歪み

人間はこの世に生まれ育つなかで、生きていくのに必要な
言葉や知識を覚えていく。
ところが、メディアなどの情報社会にあって、
年齢に応じた成長がどんどん歪んでいく。

成長環境の変化とともに、自らの経験によって獲得していく
納得ではなく、経験なき知識ばかりが肥大化していく。
そこで生まれるのは生活感なき観念の増幅であり、
自制心の希薄化である。

○子どもとテレビ

3歳までの子どもは、言葉が確立していないので、
頭のなかで物語としての記憶はできない。
記憶とは体験を言葉でエピソードにすることだからです。

ところが言葉が未確立の段階でビデオなどの影響を受けて
造られた自分なりの物語ができてしまうと、そこから逃れられなくなる。

造られた疑似体験が、あたかも実際の体験であるかのような錯覚をもたらす。

○日本小児科医会の「子どもとメディア」対策委員会の提言

1)2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう。
2)授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴はやめましょう。
3)すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。
1日2時間までを目安と考えます。
テレビゲームは1日30分までを目安とします。
4)子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パソコンを置かないようにしましょう。
5)保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールを作りましょう。

○地方自治体の取り組み

青森県北津軽郡板柳町の「ノーテレビ、ノービデオデー」

レベル1 食事中はテレビを消す
レベル2 夜9時以降はテレビを見ない。テレビゲームをしない
レベル3 テレビやゲームを1日1時間まで
レベル4 家に帰ってきてからテレビを見ない、テレビゲームをしない
レベル5 1日テレビをみない、テレビゲームをしない

他にも、大人のネットとの上手な付き合い方についての
談義もあります。非常に興味深いです。

この本を読んで、
○自分で社会問題について時間をとって考えること
○自分はどう子育てをしていくのか
○社会問題を無視せず関心を持つこと

を確認できました。